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令和8年度ふくしま外国人雇用管理セミナー参加レポート

2026年10月9日、福島市市民センターで「令和8年度ふくしま外国人雇用管理セミナー」が開催されました。主催は福島労働局福島公共職業安定所と福島市で、定員40人の会場です。

キャリアウルでは昨年も同じセミナーに参加しています。内容は制度改正にあわせて更新されていましたが、それ以上に残ったのは会場の空気の違いでした。体感として参加者が増えており、最後の質疑応答では次々と手が挙がりました。質問の内容も制度の概要を確かめるものではなく、申請の時期や届出の方法といった実務の細部に踏み込んだものでした。

本記事ではセミナーで何が語られたのかを次第に沿って整理したうえで、参加して感じたことを記します。

目次

セミナーの概要

項目内容
名称令和8年度 ふくしま外国人雇用管理セミナー
日時2026年10月9日(金)13:30〜15:30
会場福島市市民センター 3階 303会議室
主催福島労働局福島公共職業安定所・福島市
共催福島労働局職業安定部職業対策課
後援仙台出入国在留管理局
対象外国人労働者を雇用している事業主、これから雇用を考えている事業主
定員・参加費40人・無料

プログラムは次のとおりです。

時刻内容登壇
13:30開会挨拶ハローワーク福島 所長
13:40外国人労働者の現状と外国人雇用時に必要な届出について福島労働局職業安定部職業対策課 雇用指導係
13:55【講演】外国人の適正な雇用と在留資格全般の留意事項仙台出入国在留管理局 審査第2部門
14:45【講演】外国人材雇用後のコミュニケーション方法や雇用のメリットについて一般財団法人日本国際協力センター(JICE)多文化共生事業部
15:25質疑応答—

行政からの制度説明と、受け入れ現場の運用支援を手がける団体からの実務的な講演が組み合わされた構成でした。

福島県の外国人雇用はいま

開会挨拶と第2部では、福島県内の状況が数字で示されました。県内の外国人雇用の現在地を、3つの角度から整理します。

  • 県内1万5,079人・2,573事業所で過去最多
  • 雇用事業所の6割近くが「30人未満」
  • 届出は「雇用保険に入るか」で様式が変わる

1つずつ見ていきましょう。

県内1万5,079人・2,573事業所で過去最多

福島県内の外国人労働者数は、令和7年10月末時点で1万5,079人、雇用する事業所は2,573事業所でした。前年はそれぞれ1万3,710人、2,473事業所で、労働者数は10.0%、事業所数は4.0%の増加です。いずれも過去最多の更新で、震災前の平成22年10月末(3,767人)と比べると4倍の水準になります。

ハローワーク福島管内でも、今年6月末時点の速報値が約2,530人と、年度途中の段階で前年10月の2,599人に近い水準です。

在留資格別の最多は「技能実習」の5,603人で、全体の37.2%を占めます。次いで「専門的・技術的分野の在留資格」が4,135人(27.4%)、「身分に基づく在留資格」が3,051人(20.2%)の順です。専門的・技術的分野の内数として、「特定技能」は1,686人(全体の11.2%)です。

産業別では労働者数で見ると製造業が5,250人で最多となり、全体の34.8%を占めます。第2部では全国と比べた福島県の特徴として、次の2つが示されました。

全国平均と福島県の比較

  • 製造業の割合(全国24.7%/福島県34.8%)
  • 技能実習の割合(全国19.4%/福島県37.2%)

いずれも全国より高い水準です。なお全国の外国人労働者数は257万1,037人で、こちらも過去最高を更新しています。

国籍別の最多はベトナムの4,780人(31.7%)で、フィリピン2,584人(17.1%)、インドネシア1,784人(11.8%)が続きます。全国でもベトナムが最多(60万5,906人、23.6%)で、中国(43万1,949人、16.8%)が2位です。福島県はさらにベトナムの比率が高く31.7%です。

近年は製造業に加えて、建設・医療・福祉・宿泊・飲食といった分野の比率が高まっているという指摘もありました。

雇用事業所の6割近くが「30人未満」

事業所の規模別に見ると、外国人を雇用している事業所の最多は従業員30人未満の事業所で、1,486事業所、全体の57.8%を占めています。

同じ趣旨の指摘が、第2部と第4部の両方でありました。小規模な事業所では外国人の受け入れは難しいと思われがちですが、実際には小規模な事業所が県内の外国人雇用の中心だという説明でした。

届出は「雇用保険に入るか」で様式が変わる

第2部では外国人を雇い入れたときと離職したときの届出について説明がありました。

届出の対象となるのは、日本の国籍がない方のうち、特別永住者と在留資格「外交」「公用」の方を除く全員です。手続きは本人が雇用保険の被保険者になるかで分かれます。

区分使用する様式雇入れ時の期限離職時の期限
雇用保険に加入する(週20時間以上)雇用保険被保険者資格取得届/喪失届の外国人記載欄雇い入れた日の翌月10日まで離職の翌日から10日以内
雇用保険に加入しない(週20時間未満など)外国人雇用状況届出書雇い入れた月の翌月末日まで離職した月の翌月末日まで

記載する内容はいずれもほぼ同じで、在留資格・在留期間・「国籍・地域」・在留カードの番号などです。提出先は管轄のハローワーク、または電子申請になります。

ここで注意点として挙げられたのが、雇用保険の対象にならない場合も届出は必要であることです。届出が必要なことは知られておらず、漏れるケースがあるという説明でした。

雇い入れの際には、在留カードなどで次の3つを確認することが求められます。

雇い入れ時に確認すること

  1. 在留期限が切れていないか
  2. 就労が認められている在留資格か
  3. 認められている範囲の業務か

留学や家族滞在は原則として就労が認められません。資格外活動許可を受けている場合に限り、原則週28時間以内で就労できます。許可の有無は在留カードの裏面にある資格外活動許可欄で確認します。

今年6月に運用が始まったのが、マイナンバーカードと在留カードが一体となったカードです。セミナーでは在留カードが偽造されたものでないかをスマートフォンで確認できるアプリも案内されました。

なお、新様式の在留カード等の交付も2026年6月14日からです。新様式では「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」「交付年月日」が券面から外れ、ICチップにのみ記録されます。ただし「在留期間の満了の日」は券面に残るため、在留期限の確認はこれまでどおりです。永住者と高度専門職2号は、カードの有効期間が交付の日後の10回目(18歳未満は5回目)の誕生日までに変わりました。

在留カード等読取アプリケーションも新様式に対応しましたが、券面から外れた項目が表示されるのは2026年8月19日のリリース版からです。8月19日より前のバージョンでは在留期間が表示されません。

在留資格の体系と確認の手順については、下の記事をご覧ください。

在留資格とは?種類一覧と外国人雇用で押さえるべき手続き・注意点を解説

なお、外国人雇用管理指針は改正され、2026年6月14日から適用が始まりました。外国人労働者本人とその家族に対する日本語学習の機会の提供や学習支援に努めることが、新たな項目です。適用は段階的で、6月14日のあとも2026年10月1日、2027年4月1日と時期が分かれています。

在留資格と育成就労制度

第3部は仙台出入国在留管理局による講演で、令和9年4月に始まる育成就労制度に時間が割かれました。要点は4つです。

  • 在留資格は就労の可否と身分・地位で分かれる
  • 令和9年4月、育成就労制度がはじまる
  • 最大の変更点は「本人の意向による転籍」
  • 技能実習からの経過措置は新ルールの対象外

1つずつ解説していきます。

在留資格は就労の可否と身分・地位で分かれる

在留資格はおおまかに、就労が認められるもの、認められないもの、身分や地位に基づくものに分かれます。永住者や日本人の配偶者等のように身分や地位に基づくものは活動の制限がなく、日本人と同様に雇用できます。一方、就労が認められる在留資格ではその資格に応じた活動しかできません。「技術・人文知識・国際業務」で許可を受けた方が該当しない業務に従事すると、不法就労活動になります。雇用主が不法就労助長の責任を問われる可能性があるという説明がありました。

令和9年4月、育成就労制度がはじまる

育成就労制度は令和6年6月に成立した入管法等の改正によって創設され、令和9年4月1日に運用が開始されます。在留資格「技能実習」は廃止され、新たに在留資格「育成就労」が設けられます。

技能実習制度の創設は平成5年で、30年にわたって運用されてきた制度です。講演では30年の間に指摘されてきた課題として、次の3つが挙げられました。

技能実習制度に指摘されてきた課題

  • 国際貢献という制度目的と実態の乖離
  • 一部の実習実施者による人権侵害の発生
  • 特定技能制度と一体でなくキャリアパスが不明確

育成就労制度で変わるのは、制度の目的そのものです。技能実習法にあった「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」という規定は削除され、人材育成と人材確保の両方を目的とする制度として設計されています。受け入れ対象分野は特定技能の特定産業分野と原則として一致させ、3年間の就労を通じて特定技能1号の技能水準をもつ人材を育成する仕組みです。

令和8年1月23日に閣議決定された分野別運用方針では、特定技能の特定産業分野にリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野が追加され、全19分野となりました。19分野のうち、育成就労の対象となる育成就労産業分野は17分野です。航空と自動車運送業は含まれません。講演では対象外とする分野の考え方も示されました。対象外となるのは、特定技能1号の水準の業務に従事するために国家資格等の取得が必要な分野です。日本での就労を通じた技能習得が想定しにくいためです。自動車運送業が例として挙げられていました。

技能実習制度にはなかった仕組みとして、受け入れ見込み数の上限が加わります。生産性の向上と国内人材の確保に取り組んでもなお不足する人数を分野ごとに定め、不足分が上限です。

技能と日本語の要件は、段階的に設けられます。

段階技能の要件日本語の要件
就労開始前—A1相当以上の試験に合格、または認定日本語教育機関等で100時間以上の日本語講習
本人の意向による転籍技能検定基礎級等A2.1相当以上
育成就労 → 特定技能1号技能検定3級等、または特定技能1号評価試験A2.2相当以上
特定技能1号 → 特定技能2号特定技能2号評価試験B1相当以上

移行先となる特定技能制度そのものの仕組みは、下の記事で解説しています。

特定技能とはどんな在留資格?1号・2号の違いや対象19分野、採用要件を徹底解説

技能実習制度では入国後講習で日本語科目を実施することが求められるだけで、特定技能1号への移行時に日本語の要件はありませんでした。効率的な技能習得・本人の権利保護・地域社会での共生を踏まえて要件が設けられた、という説明でした。

最大の変更点は「本人の意向による転籍」

技能実習制度では実習先の変更が認められるのは人権侵害行為などのやむを得ない事情がある場合のみでした。転籍制限について、制限の存在が実習実施者と技能実習生の間に過度な支配従属関係を生じさせ、人権侵害の背景原因になっているという指摘があったことが説明されました。

育成就労制度でも、人材育成の実効性を確保するための一定の制限は残したままです。そのうえで、やむを得ない事情がある場合以外にも、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が同一の業務区分内で認められます。主な要件は次のとおりです。

本人の意向による転籍の主な要件

  • 同一の受け入れ先で所定期間(1年以上2年以下)を超える就労
  • 一定の水準の技能の習得
  • 一定の水準の日本語能力
  • 技能・日本語の育成実績に照らして適切な転籍先

期間については、労働関係法令上、1年を超える契約でも1年を超えれば退職が可能であることなどを踏まえ、1年とすることを目指すとされています。分野で1年を超える期間が設定された場合も、受け入れ側の判断で1年とすることは可能です。

また、転籍にあたっては、受け入れに要した初期費用を転籍先も分担する仕組みが設けられます。支払うのは転籍先で、金額は告示で定める額に転籍元での就労期間に応じた按分率をかけた額です。

転籍者ばかりを受け入れることを防ぐため、受け入れ中の育成就労外国人のうち本人意向の転籍者が占める割合には上限が設けられます。基本は3分の1までですが、地方から大都市圏等への転籍については、受け入れる側の割合が6分の1までに制限されます。ここでいう大都市圏等は東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫の8都府県で、福島県は含まれず「指定区域」の側です。つまり県内の企業で育成就労を開始した方が大都市圏へ転籍する場合、受け入れる企業側により厳しい枠がかかる設計になっています。

本人の意向による転籍の支援は、監理支援機関が中心となり、ハローワークや外国人育成就労機構などと連携して進められます。当分の間、民間の職業紹介事業者の関与は認められません。地方から都市部への流出が高まるのではないかという意見と、悪質なブローカーから外国人を保護すべきという意見を踏まえた措置だという説明でした。

技能実習からの経過措置は新ルールの対象外

実務上の注意点として説明されたのが、技能実習制度からの経過措置です。

技能実習生や実習実施者への配慮から、施行日後も技能実習を続けられる措置が設けられています。ここで押さえておきたいのは、経過措置に基づいて引き続き技能実習をする場合、技能実習制度のルールが適用されることです。転籍など、育成就労制度で新たに設けられるルールの対象外になります。

経過措置の対象となるのは次の2つのケースです。

ケース要件
施行日前に入国している場合施行日時点で日本国内で技能実習を実施中
施行日前に技能実習計画の認定申請をしている場合施行日から3か月以内(2027年6月30日まで)の上陸許可と開始

すでに技能実習を修了して帰国している場合は対象とならず、施行日以後に技能実習生として再度来日することはできません。

また、施行日時点で技能実習をしている1号技能実習生は、施行日後も2号に移行できます。ただし3号への移行は、施行日時点で2号技能実習を1年以上している方に限られます。

受け入れ側の体制も変更の対象です。技能実習制度の監理団体に代わって監理支援機関が置かれ、許可の要件が厳格化されます。外部監査人の設置が義務化されるほか、受け入れ機関数に応じた職員の配置や相談体制の担保も要件です。技能実習制度で監理団体の許可を受けている場合も、監理支援機関の許可の取り直しが必要です。

送り出し国との関係でも、2国間取決め(MOC)を作成した国の送り出し機関からのみ受け入れる仕組みになります。外国人が支払う費用の総額は、報酬の2か月分を超えてはならないとする仕組みも設けられます。高額な手数料による借金が失踪事案などの背景になっているとの指摘を踏まえた措置です。

受け入れのメリットと、やさしい日本語

第4部はJICE(一般財団法人日本国際協力センター)多文化共生事業部による講演で、受け入れのメリットと職場のコミュニケーションが扱われました。

  • 若い人材の確保・社内への刺激・インバウンド対応
  • 「背中を見て覚えろ」が通らなくなる
  • やさしい日本語――変わるべきは日本人側の話し方
  • 「我々は労働者を呼んだのに、やってきたのが人間だった」

それぞれ詳しく見ていきましょう。

若い人材の確保・社内への刺激・インバウンド対応

受け入れのメリットとして挙げられたのは次のとおりです。

メリット内容
若い人材の持続的な確保18歳以上が対象。20代・30代が中心
技術志向の人材が来る技術者として活躍したい動機をもつ方もいる。定着すれば地域の担い手に
社内への刺激と技術の伝承既存の社員にも刺激があったという声が多い
インバウンド対応観光・宿泊で、外国人客への対応力が向上

一方で、人材の確保は今後さらに難しくなるという見通しも示されました。現在はベトナムからの受け入れが多いものの、今後も同じ規模で若い人材を呼べるかは難しいのではないか、という現場の感覚です。「日本語教育がすでに済んでいる人を呼びたい」との需要は全国的に高いものの、実際には難しいという指摘もありました。

確保の難しさとあわせて、採用コストの整理も示されました。育成就労は50万円から110万円程度に加えて、日本語教育などの年間負担が必要です。特定技能は採用時のコストが比較的低い代わりに、年間のコストがかかります。

特定技能の採用にかかる費用の内訳と、活用できる助成金については、下の記事でまとめています。

特定技能の採用完全ガイド!費用・流れ・活用できる補助金を徹底解説

「背中を見て覚えろ」が通らなくなる

メリットのなかで、特に実務の手応えが感じられたのが業務整理に関する話でした。

日本の職場には、仕事の手順を明文化せず「背中を見て覚える」やり方で伝えてきたところもあります。外国人材を受け入れると、背中を見て覚える方法では伝わらないため、手順をマニュアルにする必要が生じます。マニュアル化の結果として業務の整理が進んだ、という声が多く寄せられているという説明でした。

さらに続きがありました。業務を整理してマニュアル化した結果、AI化が進んだ企業もあった、という説明です。受け入れのために取り組んだ業務の棚卸しが、別の効率化にもつながったことになります。

受け入れの手順についても説明がありました。最初のステップは受け入れ方針の策定、つまり何の仕事を外国人材にお願いするのか、その範囲と内容を決めることです。ここが曖昧なままだとトラブルにつながる可能性があるため、講演では最も重要な工程として位置づけられていました。

また、労働関係法令は国籍に関係なく適用されるため、同じ業務であれば日本人と同等以上の報酬を支払うこと、最低賃金を守ることが前提です。「外国人は安く雇える」との前提は成り立たないと、あらためて強調されました。

宗教上の配慮については、同じ信仰でも許容の範囲に幅があるため、本人と会社がそれぞれどこまで対応できるかを話し合って決めることが推奨されていました。ただし安全管理が関わる場合は安全が優先です。その際も「それが必要な理由」から説明すると、習慣として定着につながるという指摘がありました。

やさしい日本語――変わるべきは日本人側の話し方

後半は「やさしい日本語」の講演でした。出発点として示されたのが、「分かりました」と答えたのに、わかっていなかった場面です。本人の日本語力の問題として片づけてよいのか、という問いかけがありました。

日本語にはすべてを説明せずに相手に察してもらうことを前提とした表現が多くあります。例として挙げられたのが次の2つです。

言い方日本人同士での解釈字面どおりの解釈
できれば早めにやっておいてほしいすぐにやってほしいできなければ後でよい
ちゃんとメールを読んでおいて読んで、対応して、報告する読むだけでよい

いずれも、意図が言葉に表れていません。

外国人に対して望ましい話し方を尋ねたアンケートでは、英語よりも「やさしい日本語」を求める声が最多という結果も紹介されました。実践のポイントとして挙げられたのは次のとおりです。

ポイント具体例・補足
長い文は句点で区切る読点でつなげず、一文ずつ終える
「〜してください」で言い切る命令形は学習の後半で習うため伝わりにくい。「〜していただけると嬉しいのですが」も依頼か判断しにくい
感情ではなく行動を伝える「ギリギリだ」→「○時までに終わらせてください」
カタカナ語を避ける「マイペース」が通じなかった例あり
数字と期限を明確にする「来週までに人数分」→「18日17時までに5人分」
完了状態まで伝える「コピーしておいて」だけでは、その後どうするかが伝わらない
復唱させて確認する「今日は何をしますか」「来週中には何をしますか」と尋ねる

あわせて挙げられたのが、思い込みを避けることです。話すのが得意でも文字が読めない方、逆に文章は書けるが会話が苦手な方もいます。そして、日本語能力と仕事の能力は別のものとして扱うことが必要だという指摘がありました。わかりやすく指示をすれば、その方の能力は発揮されるという考え方です。

危険が伴う現場の工夫として、緊急時の連絡先を指差しで示すシートの事例も紹介されました。シートを日本人だけで作らず、外国人の社員と一緒に作ること自体がコミュニケーションの場になるという提案でした。

「我々は労働者を呼んだのに、やってきたのが人間だった」

講演の最後に紹介されたのが、第二次世界大戦後に移民労働者を受け入れた国で語られたという言葉です。

我々は労働者を呼んだのに、やってきたのが人間だった

労働者としてだけでなく、生活者として見る視点が必要だという文脈で引用されました。在留資格の説明にもあったとおり、3年や5年で帰国する方ではない人がこれから増えていきます。長期にわたって日本で生活することを前提に、地域の国際交流協会などとつなぎながら進めてほしい、という結びでした。

参加して感じたこと

ここからはセミナーに参加して感じたことを書きます。講演を聞いて考えたことと、会場で受けた印象を1つずつ取り上げます。

  • 人手不足を補うと、言葉にしていなかった仕事が見えてくる
  • 質問の数が、昨年と違った

順に見ていきましょう。

人手不足を補うと、言葉にしていなかった仕事が見えてくる

今回のセミナーで最も関心をもったのは、受け入れのメリットとして「現場の曖昧さからの脱却」と「AI化との関係」が挙げられていたことでした。

人手不足を補う手段として外国人材を雇用すると、それまで存在しなかった業務が発生します。手順のマニュアル化、社内文書の多言語対応、生活面の支援など、受け入れる前にはなかった仕事です。負担として語られがちですが、私はむしろ、新しく生じる業務こそAIやDXを活用した業務効率化を進める好機だと感じました。

セミナーで紹介された、マニュアル化を進めた結果としてAI化が進んだ企業の事例は、まさに同じ順序です。業務が暗黙知のまま属人化している状態では、効率化に着手する手がかりがありません。外国人材の受け入れは、暗黙知を言語化せざるを得ない状況を作ります。言語化され、手順として整理された業務は、効率化の対象として扱えるようになります。

受け入れに伴って生じる業務を、やらなければならない追加作業として処理するのか、業務全体を見直す入口として扱うのか。同じ作業でも、どちらと捉えるかで数年後の状態は変わってくるのではないかと思います。

質問の数が、昨年と違った

もう1つ、昨年との違いとして感じたことがあります。

参加者は昨年より増えた印象です。そして最後の質疑応答で、昨年よりも多くの質問が出ていました。

印象に残ったのは質問の内容です。制度の全体像を確かめるものではありませんでした。例えば留学生を採用する際の在留資格変更許可申請はいつから提出できるのか、ダブルワークが始まった場合に届出が必要なのか、といった実務の細部です。実際に手続きを進めている、あるいは近いうちに進める予定がある方からの質問だと受け取りました。

育成就労制度の開始まで、残り半年程度です。制度を知るための参加から、準備のための参加へと、企業側の段階が移りつつあるのではないかと感じました。外国人材の雇用について検討している企業が、それだけ増えているように見えます。

まとめ――残り半年で確認しておきたいこと

今回のセミナーで示された内容のうち、受け入れている企業、これから検討する企業が確認しておきたいことを整理します。残り半年で何から手をつけるか、以下の5つから確認してみましょう。

残り半年で確認したいこと

  • 経過措置の対象の技能実習生を仕分けること(新ルール対象外)
  • 監理団体に、監理支援機関の許可を取り直す予定か確認すること
  • 分野別運用方針で、自社分野の技能・日本語水準を確認すること
  • 雇用保険の対象外も含めて、外国人雇用状況届出を点検すること
  • やさしい日本語を、いくつかに絞って職場の習慣にすること

届出の取り扱いで迷ったときは、管轄のハローワークに確認してみてください。育成就労制度の対象や要件は、監理団体や出入国在留管理庁の窓口が相談先です。

育成就労制度では本人の意向による転籍が認められるため、受け入れた方に働き続けてもらえるかは、これまで以上に職場の環境に左右されます。質疑応答では同じ国出身の方どうしのコミュニティで職場の情報が速く共有されるという指摘もありました。

外国人材の受け入れがもたらすのは、これまで言葉にしてこなかった仕事の進め方を、言葉にせざるを得ない状況です。可視化された業務は、効率化の対象にもなり、働きやすさを見直す対象にもなります。制度への対応に追われて終わるのか、現場を見直すきっかけとして使うのか。残り半年の過ごし方で、その先が変わってくるのではないかと考えています。


参考:

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