編集長少子高齢化が進むなか、外国人材の受け入れは地域企業にとって身近な課題になりつつあります。しかし、雇用後の生活支援や心のケアにまで手が回る企業ばかりではありません。福島市国際交流協会は、福島市多文化共生センター「Yuiverse(ユイバース)」を拠点に、国際交流から日本語学習、就職相談まで一貫して支援してきました。
今回は福島市多文化共生センター「Yuiverse」マネージャーの坪井さんに、Yuiverseが担う役割と企業支援の実際について話を伺いました。
平成6年設立から続く、地域に根ざした交流のあゆみ





協会のこれまでの歩みについて教えてください。



平成6年の設立以来、地道な交流イベントを積み重ねながら会員数を広げ、その延長線上で多文化共生センターYuiverseの開設につながってきました。
福島で暮らす外国出身者の増加が生んだ多文化共生センター
―まずは坪井さんの自己紹介をお願いします。
坪井さん:
福島市多文化共生センターYuiverseのマネージャーをしています坪井です。福島市生まれ、福島市育ちで、よくみなさんから聞かれるのですが、私は海外経験はありません。福島をよく知る私だからできることを大切に、外国出身のみなさんが安心して心地よく暮らせるまちづくりに取り組んでいます。
―次に協会の設立経緯と活動目的についてご紹介ください。
坪井さん:
協会が設立されたのは平成6年3月28日です。福島市でも国際交流活動を推進し、海外との関わりを持っていこうという目的で立ち上げられたと聞いています。
設立当初にどのような活動をしていたか詳細までは私も把握していないのですが、今も続いている「ALT・CIRと英語で話そう」や料理教室は、10年ほど前から続けてきたようです。
そうした活動を細く長く続けてきた中で、福島市で暮らす外国出身の方が増えてきて――コロナ禍で一度落ち込んだものの、その後また増加してきて――支援の必要性が高まってきたため、多文化共生センターの立ち上げにつながりました。
どんな施設にするかを市民参加のワークショップで考え、外国出身の方にも加わってもらいながら話し合いを重ねて、今のYuiverseができています。
団体44団体・個人110名――ゆるやかに広がる会員の輪
―現在、団体・個人・協賛を合わせてどのくらいの会員数で活動されていますか?
坪井さん:
令和8年3月時点で団体会員が44団体、個人会員が110名、協賛が3団体です。年々の推移については、体感として増加傾向にあると感じています。
「結ぶ」と「世界・宇宙」を組み合わせた名前、Yuiverse
―「Yuiverse」という名称の由来を教えてください。
坪井さん:
多文化共生センターを立ち上げる際に、みんなに親しまれる愛称があった方がいいということで、名称を全国から公募しました。
日本語の「結(ゆい)」が持つ「結ぶ」という意味と、「ユニバース(世界・宇宙)」を組み合わせて生まれた名前です。全国29都道府県から327件の応募があり、会員へのアンケートを経て選ばれました。
「誰でも来られる居場所」――Yuiverseが担う役割と交流事業





多文化共生センターYuiverseは、どのような場所なのでしょうか?



Yuiverseは、国籍を問わず誰でも気軽に立ち寄れる「リビングルームのような場所」として、交流イベントや相談対応を通じて外国出身の方のサポートを行っています。
リビングルームのような、国籍を問わない居場所
―多文化共生センターYuiverseは、そもそもどのような役割を担う拠点なのでしょうか?
坪井さん:
Yuiverseは「リビングルームのような場所」というコンセプトで作られています。外国出身の方に限らず、誰でも自分の家のようにくつろいで来てもらえる場所です。
相談をしたり、お互いに交流したりする場所で、役割としては外国出身の方のサポートが基本ですが、それだけでなく誰もが気軽に来られる居場所づくりを大切にしています。
世界の文化、言語体験――多彩な交流イベント
―国際交流の観点で、Yuiverseでは具体的にどのような事業やイベントを行っていますか?
坪井さん:
多文化・多言語に触れる事業と、日本文化を体験できる事業、そして外国出身の方の生活を応援する事業などを行っています。
多文化・多言語に触れる事業では、英会話を楽しむ「ALT・CIRと英語で話そう」、様々な国の料理づくりを体験する「World Kitchen」が人気です。
外国出身の方の生活を応援する事業としては、JLPT(日本語能力試験)対策講座、日常会話を練習したい方向けの「にほんごでおしゃべりしよう」などを行っています。
「にほんごでおしゃべりしよう」は、日本人向けに「やさしいにほんご」を知ってもらう目的も込めていて、日本人ボランティアを募集し、やさしいにほんごで外国出身の方と話してもらう場にもなっています。
参加者の国籍は特定の国に偏らない
―こうした交流イベントには、どのような層の参加が多いですか?
坪井さん:
日本人の方が多いですが、最近は外国出身の方の参加も増えてきています。ALTの方や、国際結婚で福島に来た方、留学や仕事で来ている方など、背景はさまざまです。
国籍についても本当にさまざまで、幅広い国から参加いただいております。
交流から支援へ――日本語・ビジネスマナー・就職相談まで





―交流だけでなく、就労に関わる支援にも力を入れているそうですね。



日本語力やビジネスマナーの習得支援から、履歴書指導やハローワーク利用のサポートまで、就職につながる支援を行っています。
「福島に残りたい」その先に見えた壁
―単なる交流の場にとどまらず、日本語講座やビジネスマナー講座など「生活・就労」に踏み込んだ支援を行うようになった経緯を教えてください。
坪井さん:
Yuiverseがオープンしてから、いろいろな方とお話しする中で見えてきたことがあります。
在留期間が終わって、次の就職先を探したいけれど見つからずに困っている方が多かったんです。多くの方が福島を気に入ってくれていて、できれば福島に残りたいという声を聞くたびに、応援したい、残ってもらいたいと感じていました。
そこでYuiverseにできることを考えたときに、日本語力を上げて就職につなげやすくすることや、ビジネスマナーを身につけてもらうことが必要だと思い、今の支援につながっています。
マッチングはしない――外国人求職者に寄り添う支援
―外国人求職サポートでは、具体的にどのような流れで企業とのマッチングを支援していますか?
坪井さん:
実は、企業とのマッチング自体は行っていません。
来ていただいた方に、どんな仕事をしたいかを聞いたり、ハローワークの使い方をお伝えしたり、時には一緒に行ったりします。あとは履歴書について、個別にここをこうした方がいいと具体的にお伝えすることもあります。
企業向け支援の実際――行政だからこそできる伴走





企業向けにはどのような支援をしているのでしょうか?



企業向け相談窓口は、市のファーストステップ相談窓口で受け付けています。雇用前後の相談対応から専門機関への橋渡しまで、行政ならではの中立な立場で企業に伴走しています。
「雇用前」から「雇用後」まで――企業からの相談傾向
―外国人材の雇用を検討する企業から、実際にどのような相談が多いですか?
市担当者:
「これから雇用したいが、どうしたらいいか」という雇用前の初期段階でのご相談が多い傾向にあります。
一方で、「雇用することが決まったので、この後の手続きの流れや公的な支援制度について聞きたい」という一歩進んだご相談もあります。
「行政の支援は不要」という声から見えたもの
―なお、相談対応や講座を通じて、印象に残っている企業・外国人材のエピソードがあれば教えてください。
市担当者:
外国人雇用がすでに軌道に乗っている企業から「特に行政からの支援は必要としていない」という声をいただいたことがあり、目から鱗が落ちる思いでした。
雇用当初は文化や言葉の違いに戸惑う場面もあったようですが、監理団体との連携や経験の積み重ね、労働者同士のコミュニティづくりを通じて雇用のサイクルが確立し、企業側にも労働者本人にも特段の苦労がない状態になっていました。そのレベルに至る企業が増えるよう、これから雇用を検討している企業や、すでに雇用していて課題を感じている企業を、行政として支援していきたいと考えています。
もう一つ印象に残っているのは、「福島弁がわからない、学んだ日本語と違う」と外国人労働者の方から声が上がり、企業側が戸惑ったという出来事です。
これは外国人労働者に限らず、日本人同士のコミュニケーションでも起こりうることだと感じ、「やさしい日本語」の大切さを改めて実感しました。
また、履歴書の書き方や面接時のマナーについて、日本の商習慣に合わせた具体的なアドバイスを重ね、就職につながった例もあります。こうした相談は特別なケースに限らず、日本の文化への理解が深い方からもいただくことがあるとのことです。
「売り込まれない」安心感というハブ機能
―無料相談ならではの「行政・公的機関だからこそできる支援」とは、どのようなものだとお考えですか?
市担当者:
行政に相談できるという「安心感・信頼性」が強みだと思います。自治体の相談窓口は基本的に特定の商品・サービスの販売を目的としていないので、「人材紹介を勧められるのでは」「相談料がかかるのでは」といった警戒心を持たずに相談いただけます。
また、この窓口だけですべてを解決するのではなく、住居や子育て、医療、教育など、外国人労働者本人の生活全般に関わる適切な専門機関へつなぐハブの役割も担っています。「外国人を採用するにはどうしたらいいか」だけでなく、「採用した外国人が地域で暮らし、働き続けられるにはどうすればいいか」まで視野に入れた支援ができることが、行政ならではだと考えています。
学校との新しいつながりと、これからの福島へのメッセージ





今後、どのような展開を考えていますか?



学校との連携など新しい取り組みを進めながら、雇用や交流に関心を持つ企業・市民に「まず相談してほしい」と呼びかけています。
中学校からの依頼で生まれた多文化共生授業
―今後、協会として新たに取り組んでいきたい活動や連携があれば教えてください。
坪井さん:
今年度、新しい動きとして、中学校から多文化共生の授業をしてほしいという依頼をいただきました。実際にお話しさせてもらう機会が2、3回ほどあり、とても良い経験になりました。これをきっかけに、今後も学校との関わりを続けていけたらと思っています。
直近では、中学生が福島の郷土料理を外国出身の方に伝えたいという声から、福島の名物、円盤餃子の作り方を教える企画も進めています。ハラール対応のお肉を使った餃子を一緒に作りながら、イスラム教についてもお互いに教え合うような授業になればと考えています。
「まずはYuiverseをご案内」――企業・市民へのメッセージ
―これから外国人材の雇用を検討している福島市内の企業、また地域との交流に関心がある市民に向けて、メッセージをお願いします。
坪井さん:
外国人材の雇用というと身構えてしまう方も多いと思いますが、そんなにハードルが高いものではないと感じています。Yuiverseのスタッフは普段から外国出身の方のサポートをしているので、生活面などで困っている外国人がいるのであれば、まずはYuiverseをご案内していただければと思います。
また、外国出身の方が就職や生活の中でどんなことにハードルを感じやすいかは、企業の方よりも私たちの方が知っている部分があると思うので、その橋渡しができればと考えています。
編集後記|「マッチングはしない」からこそ築ける信頼



今回の取材で印象に残ったのは、Yuiverseが「マッチングはしない」と明言しながらも、履歴書の一文や面接での立ち居振る舞いまで一緒に確認するという、地道な伴走を続けてきた点です。
行政の相談窓口というと事務的な印象を持ちがちですが、特定の商品やサービスを売り込む必要がないからこそ築ける信頼関係があるという言葉には説得力がありました。
会員数の増加についても「増加だと思いますね」という控えめな言い方が印象的でした。中学校との連携など新しい取り組みも始まっており、Yuiverseが福島の多文化共生の拠点としてどのように広がっていくのか、今後の展開にも注目したいと思います。
福島市国際交流協会概要
| 団体名 | 福島市国際交流協会 |
| 会長 | 福島市長 馬場雄基 |
| 運営施設名 | 福島市多文化共生センターYuiverse(ユイバース) |
| 施設所在地 | 〒960-8051 福島県福島市曽根田町1-18 MAXふくしま3F |
| 設立 | 協会設立は平成6年3月28日 Yuiverse開設は令和5年9月30日 |
| 会員数 | 団体会員44団体、個人会員110名、協賛3団体 |
| 事業内容 | 活動内容 1.多文化共生・国際交流イベントの実施 2.日本語学習支援 3.外国人求職者への就職相談 4.企業向け外国人材雇用支援 5.学校向け多文化共生授業等 ※企業向け相談窓口はファーストステップ相談窓口(産業雇用政策課) 提供している主なサービス支援内容 1.外国人生活相談窓口 2.交流促進スペースの提供 3.イベント・講座の開催(日本語学習、多文化・多言語体験) 4.外国人求職サポート(履歴書指導・ハローワーク利用支援等) 5.国際交流員による多言語交流 6.SNSによる情報発信(Facebook、Instagram、YouTube) 7.JICAデスクの設置 |
| 公式サイト | https://www.f-ifa.jp/ |
| SNS | Facebook: https://www.facebook.com/FukushimaCityFIFA/ Instagram:https://www.instagram.com/international.fukushima/ YouTube:https://www.youtube.com/@f-ifa4313 |


